エアフロー
エアフローとは何か?
歯科医院での定期メンテナンスを受けている方の中には、「クリーニング後も着色がすぐに戻る」「歯と歯茎の境目がすっきりしない」と感じたことがある方もいるかもしれません。
従来のクリーニングに加えて、より効果的な方法として注目されているのが「エアフロー」という技術です。今回は、このエアフローについて、その仕組みから効果まで詳しく解説します。
パウダーと空気と水で洗い流す
新しいクリーニング
エアフローは、微細なパウダー粒子を高圧の空気と水と一緒に歯の表面に吹き付けることで、歯の汚れや着色を除去する技術です。使用するパウダーは、主に「炭酸水素ナトリウム」や「グリシン」といった成分で構成されており、粒子のサイズは非常に細かく設計されています。
この技術の特徴は、物理的な研磨ではなく、パウダーと水と空気の力を利用した「洗浄」であるという点です。高速で噴射されるパウダーが歯の表面に当たることで、歯を傷つけることなく汚れを浮かせて除去します。
特に、歯の表面に形成される「バイオフィルム」と呼ばれる細菌の膜を効果的に除去できることが、エアフローの大きな強みです。
細菌の膜「バイオフィルム」を
効果的に除去できる理由
バイオフィルムは、口の中の細菌が集まって形成する粘着性の膜で、歯周病や虫歯の主要な原因となります。このバイオフィルムは単なる汚れではなく、細菌が自ら作り出す保護層に覆われているため、通常の歯磨きでは完全に除去することが難しいのです。
エアフローは、このバイオフィルムに対して機械的な力を加えることで、細菌の保護層ごと除去することができます。微細なパウダー粒子が歯の表面の細かい凹凸にも入り込むため、従来の器具では届きにくかった部分のバイオフィルムも効果的に取り除くことが可能です。
従来のクリーニングと
エアフローの違い
届きにくい場所にも届くのが
エアフローの強み
従来の歯科クリーニングでは、主に「スケーラー」と呼ばれる器具を使用して歯石を除去し、その後「ラバーカップ」と研磨剤で歯の表面を磨きます。これらの方法は歯石除去には非常に効果的ですが、いくつかの限界があります。
まず、器具が直接触れる部分しか清掃できないため、歯と歯の間や、歯と歯茎の境目の溝(歯肉溝)の奥深くまでは届きにくいという問題があります。
また、研磨剤による清掃は歯の表面を滑らかにする効果がある一方で、強く磨きすぎると歯の表面のエナメル質を薄くする可能性もあります。
エアフローは、こうした従来の方法の補完として優れた効果を発揮します。パウダーと水と空気の混合物が噴射されるため、器具が直接届かない部分にも到達し、歯の表面を傷つけるリスクを最小限に抑えながら清掃できます。
特に、歯肉溝の浅い部分や、矯正装置やインプラント周囲など、複雑な形態の部分の清掃に適しています。
歯の着色汚れは
エアフローがより効果的
コーヒーや紅茶、タバコなどによる歯の着色は、多くの人が気になる問題です。従来の研磨剤による清掃でも着色は除去できますが、頑固な着色の場合は時間がかかり、また研磨の力加減によっては歯の表面を傷つける可能性があります。
エアフローは、着色物質を効率的に除去できることが特徴です。微細なパウダーが歯の表面に付着した着色を浮かせて落とすため、短時間で広範囲の着色を除去できます。
また、エナメル質を削るのではなく洗い流す方法のため、歯の表面への影響が少なく、定期的に受けても安心です。
エアフローで
得られる効果とメリット
歯周病予防に直接つながる効果がある
歯周病は、歯茎の炎症から始まり、進行すると歯を支える骨まで溶かしてしまう病気です。この歯周病の予防において、バイオフィルムの定期的な除去は極めて重要です。
エアフローによるバイオフィルム除去は、歯茎の健康維持に直接的な効果があります。歯と歯茎の境目に形成されるバイオフィルムを効果的に除去することで、歯茎の炎症反応を抑えることができます。
実際に、エアフローを定期的に受けている患者さんでは、歯茎からの出血が減少し、歯茎の状態が改善するケースが多く見られます。
また、エアフローは歯肉溝の浅い部分(深さ約3〜5mm程度まで)のバイオフィルムにも到達できるため、初期の歯周病予防や、歯周病治療後のメンテナンスにおいて有効な手段となります。
痛みや不快感が少なく、歯にも優しい
エアフローのもう一つの大きなメリットは、患者さんにとっての快適性です。従来のスケーラーによる清掃では、器具が歯に当たる際の振動や音が苦手という方も少なくありません。エアフローは、パウダーと水のミストを吹き付ける方法のため、振動や不快な音が少なく、比較的リラックスして受けることができます。
ただし、完全に無刺激というわけではなく、噴射の圧力による軽い刺激や、冷たい水による知覚過敏がある方は一時的に染みることがあります。しかし、これらの刺激は一般的に従来の清掃方法よりも軽度であり、多くの患者さんが快適に治療を受けられています。
安全性の面でも、エアフローは優れています。使用するパウダーは人体に安全な成分で構成されており、適切な使用方法を守れば歯や歯茎を傷つけるリスクは非常に低いです。近年では、より優しい成分のパウダーも開発されており、歯茎が敏感な方でも安心して受けられるようになっています。
メンテナンスで
エアフローを受けるべき理由
予防歯科で重視される徹底した
バイオフィルム管理
現代の歯科医療では、「治療」から「予防」へと重点が移行しています。定期的なメンテナンスによって口腔内を健康に保つことが、生涯にわたって自分の歯を維持するために最も効果的な方法だと考えられています。
エアフローは、この予防歯科の考え方において、重要な役割を果たします。従来のスケーリング(歯石除去)とエアフローを組み合わせることで、より徹底したバイオフィルム管理が可能になります。
歯石は硬く石灰化した沈着物であるためスケーラーで除去する必要がありますが、その後にエアフローを行うことで、スケーラーでは除去しきれなかったバイオフィルムや着色を取り除き、歯の表面をより清潔な状態に保つことができます。
3〜4か月ごとの定期的な施術が効果的
エアフローの効果を最大限に活かすためには、定期的に受けることが重要です。一般的には、3〜4か月ごとの定期メンテナンスの際にエアフローを受けることが推奨されます。
この頻度は、口腔内の状態や生活習慣によって調整する必要がありますが、定期的にバイオフィルムを除去することで、歯周病や虫歯のリスクを大幅に減らすことができます。
特に、歯周病のリスクが高い方、矯正治療中の方、インプラントを入れている方、着色が気になる方などは、エアフローを定期的に受けることで、より良い口腔環境を維持できます。日常の歯磨きだけでは限界がある部分も、専門的なケアによって清潔に保つことができるのです。
よくある質問
Q. エアフローは痛いですか?
エアフローによる施術は、基本的に痛みを感じることはほとんどありません。
パウダーと水を吹き付ける際に、軽い刺激やくすぐったさを感じることがありますが、不快なレベルではありません。ただし、知覚過敏がある方や歯茎に炎症がある場合は、冷たい水による一時的な染みる感覚を感じることがあります。
Q. エアフローはどのくらいの頻度で受けるべきですか?
一般的には、3〜4か月ごとの定期メンテナンスの際に受けることが推奨されます。
ただし、口腔内の状態によって適切な頻度は変わります。歯周病のリスクが高い方や、着色しやすい生活習慣(コーヒーや紅茶を多く飲む、喫煙するなど)がある方は、より短い間隔で受けることが効果的です。担当の歯科医師や歯科衛生士と相談して、自分に合った頻度を決めることが大切です。
Q. エアフローの費用はどのくらいですか?
エアフローは、歯科医院によって費用設定が異なります。
一般的には、自費診療として3,000円〜10,000円程度の範囲で設定されていることが多いです。保険診療の歯石除去に追加するオプションとして提供されることが一般的で、通常の保険でのクリーニングとは別に費用がかかります。費用については、受診する歯科医院に事前に確認することをお勧めします。
Q. エアフローは誰でも受けられますか?
ほとんどの方が安全にエアフローを受けられますが、いくつかの注意が必要な場合があります。
呼吸器疾患がある方、ナトリウム制限が必要な方、妊娠中の方などは、事前に歯科医師に相談する必要があります。また、使用するパウダーの成分にアレルギーがある場合も注意が必要です。不安な点がある場合は、施術前に必ず歯科医師や歯科衛生士に伝えてください。
Q. エアフローだけで歯石は取れますか?
エアフローは、バイオフィルムや着色の除去には非常に効果的ですが、硬く石灰化した歯石の除去には適していません。
歯石は、スケーラーと呼ばれる専用の器具を使って除去する必要があります。理想的なメンテナンスは、まずスケーラーで歯石を除去し、その後にエアフローでバイオフィルムや着色を取り除くという流れです。両方を組み合わせることで、より徹底した口腔ケアが実現できます。
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